イラストレーター・水野行雄さんにお話を伺う

某日。イラストレーターの水野行雄先生に、絵の描き方を教えていただきました。現在開催中の「紀伊國屋展2015」第2週『乗り物/陸、海、空、宇宙(そら)』では、水野先生の去年展覧会で発表された作品とは別の原画が展示されています。メイキングのコピーをいただき、そのコピーと実際の展示されている原画を拝見しながら、とても詳しく語っていただきました。

紀伊國屋展2015 ◆第2週『乗り物/陸、海、空、宇宙(そら)』
2015年6月5日(金)〜11日(木)
電車、汽車、車、戦艦、ロケットまで全ての乗り物の世界
http://syuppanbi.com/webmag/?page_id=648

水野先生は旧日本軍の戦艦・軍艦・航空母艦などの艦艇(プラモデルのボックスアート、雑誌、書籍等に掲載)や、スポーツイラストなど、他様々なお仕事を手がけられています。その仕事は全て手描きで制作されています。制作行程を伺い、精巧な絵画がつくられるには、これほどの手が加えられていたのかと驚きました。

以前にも資料を購入している書店や、イラストレーターを目指すきっかけになった作家など、お手紙で教えていただいておりましたが、もっと詳しくお話を伺うことができて、とても楽しかったです。

水野先生とは去年の7月、「バートックアートフェア」(京橋バートックギャラリーで開催)に私が出展した際に、オープニングパーティーにお越しいただきまして、初めてお会いしました。その後、水野先生の展覧会「船展」(銀座ギャラリーミハラヤで開催)に伺ったりなどして、何度か原画を拝見させていただく機会があり、お話させていただくようになりました。













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先日伺った制作工程を思い出しながら、メモします。
思い出しながら書いているので、間違っている箇所があったら直します。

①情報収集
旧日本軍の艦艇の場合、どんな写真・文字情報もすべて大事な資料となる。兵隊達の船上での記念写真や、小さな写真、文字による記録など…。図面が残っている船は全てではないようで、細切れに記録されている情報を、自分で繋ぎ合わせ「推察」する。「想像」ではなく「推察」と強調されていたことが印象に残った。リアルを描くにあたり必要な能力は、確かな「洞察力」が必要のようだ。

②下書き
誰に見せても恥ずかしくない、下書きだけでも「作品」になるくらいの精密・精確さで描く。鉛筆で描く。

③下書きを赤ボールペンでなぞる。紙にボールペンの筆圧で「跡」を付ける。

④スポンジに水を含ませ、紙を濡らす。

⑤海や空、山など風景を塗る。

⑥船の部分ををロットリングのインクで全部塗りつぶす。

⑦ロットリングで塗りつぶしたら、更にポスターカラーで黒を塗る。黒を二度塗りすることで、濃い影の色が再現できる。

⑧端から船を描いていく。その日一日描き上げる面積だけ残して、描かない部分は白いコピー用紙で隠す。描いた部分をまたコピー用紙で隠し、翌日また描く部分だけを残してちょっとずつ進める。大きい絵に対してあまりにも細かい作業なので、こうすると精神的に進めやすいとのこと。
7で船を黒に塗りつぶしたので、下書きの鉛筆や、なぞった赤ボールペンは見えなくなってしまうが、ボールペンの「筆跡」を頼りに、色を着けていくことができる。

⑨ポスターカラーは湿度に影響される。朝起きたらまず天気予報を確認し、晴れて湿度の低い日に着彩するが、曇りや雨の日で湿度が高い日は、絵具が滲んで失敗するので作業しない。アトリエには湿度計を置いて、常に確認。制作できない天気が悪い日は、情報収集したり、ジャズを聴いたり、スポーツしたりする。

水野先生は最終的に印刷物になる絵を描いている。当時、原画を印刷するには、写真撮影していた。巨大なカメラで強いスポットライトを原画に浴びせると、紙の白地が絵具を通して反射し、色がうまく表現されなかった。そこで黒を二度塗りすることで、撮影時に紙の白地の影響を受けることなく、鉄の重量感が再現できた。

⑩完成

★水野先生の制作インタビューは「SOUGA:Magazine」でご覧いただけます。
http://syuppanbi.com/webmag/?p=213

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制作行程だけでなく、船の構造についてもたくさん質問してしまいました(私は艦艇のことは全く分からないです)。水野先生は全て滑らかに艦艇の細かい構造、用途、意味を教えてくださいました。「舷灯」というライトは、進行方向を見極めるためにあること、船が港に停泊している時は船の先端に旗を立てるが、動いている時は、先端の旗を降ろさなければいけないこと、これは国際法で決められている法律なのだそうです。また、船の内側は白く塗装されていること。航空母艦にはエレベーターがあること。ここで初めて、飛行機はいつも船の中に収納されているのだと知りました。海上は風が強く、飛行機を船上に置きっぱなしにしていたら、吹っ飛ばされてしまうと。飛行機が船上に出て来る時は、飛び立つ時だけだと初めて知りました。

水野先生はとて船など乗り物について詳しいですが、当時船を操縦していた兵隊さんたちは、自分の持ち場のことしか知らず、他の部門についての情報は全く知らされていなかったようです。むしろ知ってはいけない、知ろうとしたら軍法にかけられ、最悪死刑にされたそうです。例えば大砲の直径が知れ渡ったら、どれだけの飛距離があるのか分かる、それが敵艦隊に知れたら命取りになる…ということで、スパイ容疑をかけられてしまったそうです。そういった時代背景も今回知ることができました。

水野先生のお話はとっても面白いです。またいろいろ伺いたいです。
どうもありがとうございました。


※記念撮影はその後、同行させていただきましたO美術館「第19回 JAW展「奏(かなでる)」にて。